結論から言うと、私が会社を辞めた理由は、忙しさではありませんでした。
2017年10月16日、私は妻にこう送っています。
「きみ!! 今月、昨日までの残業時間、、1.45時間や!!」
月の半分が過ぎた時点で、1時間45分。そのあとに、こう続けています。
「検品なきゃ、楽勝や!!」
「今日も、ゼロ目標」
残業ゼロを目標にして、実際にほぼゼロだった。それでも、私はその3年後に辞表を出しています。
この記事に書くのは、忙しくないのに辞めたくなる、という状態についてです。
まず、数字を出します
18年勤めた会社は、印刷系の生産管理でした。現場に近い仕事です。
当時のやりとりに残っている数字を並べます。
| 日付 | 記録 |
|---|---|
| 2016年12月27日 | 「おれの定時は、8:30-17:30らしい」 |
| 2017年4月4日 | 「10:00-18:00定時や」 |
| 2017年10月16日 | 月の途中で、残業1時間45分 |
| 2017年10月31日 | 「今日の定時内でのおれの成果」として、金額を報告している |
定時が2回変わっているのは、部署と担当が変わったからです。どちらも8時間。
世間で言う激務ではありません。そこは、はっきりさせておきたい。
残業ゼロは、勝手にそうなったわけではない
ここは、誤解のないように書いておきます。
楽な職場だったから残業がなかった、という話ではありません。
先ほどの1時間45分の報告には、続きがあります。
「検品なきゃ、楽勝や!!」
「今日も、ゼロ目標」
ゼロ目標。自分で決めて、毎日それをやっていました。
印刷の生産管理では、刷り上がったものを見る「検品」が入ると、そこで時間が読めなくなります。逆に言えば、検品が入らない日を増やせば、定時で終わる。
そのために何をしていたかというと、前倒しです。手配を早める。確認を早める。問題が出そうな箇所を、出る前に潰しておく。
妻の返信も残っています。
「わたるくん、会社に貢献しとるな!」
うれしかったです。当時の私は、残業を減らすことを、ちゃんと成果だと思っていました。
なのに「憂鬱」と書いている
同じ時期のやりとりに、こういう言葉が残っています。
「月曜は、全然やる気でないっす」(2016年10月24日)
「憂鬱や…」(2017年3月31日)
「だがしかし…飽きた」(2017年6月6日)
「今日は、やる気が出ないぞー」(2017年6月13日)
残業1時間45分の月に、やる気が出ないと書いている人間。それが当時の私です。
読み返して、少し笑いました。恵まれているじゃないか、と自分でも思います。
でも、書いたときは本気でした。
💡 ここが、この記事でいちばん言いたいところです。労働時間と、心の減り方は、別々に動きます。体重と体調が別なのと同じで、片方が良くてももう片方が悪いことがある。時間で測れないものを、時間で説明しようとすると、話が合わなくなる。
早く帰った日に、いちばん疲れていた
2018年10月24日の記録です。
「早く帰ったが、クレーム対応で、気持ちがなかなか休まらんかった!!笑」
「結局、19:30終了や」
早く帰った日です。それでも、家に着いてから19時半まで、頭が仕事から離れていない。
生産管理という仕事は、問題が起きたときに真ん中に立つ役目です。刷り上がったものに不具合が出れば、現場と、営業と、お客さんのあいだに入る。
その時間は、勤怠には出ません。
体を動かした時間ではなく、気を張っていた時間が長かった。そこが減らないまま、残業だけがゼロになっていました。
数字は出していた。それも残っている
もうひとつ、当時の記録から。
2017年10月31日、私は妻にこう送っています。
「ちなみに、今日の定時内でのおれの成果や」
「60千円」
その日、定時のあいだに動かした金額という意味です。
わざわざ報告しているところに、そのときの気分が出ていると思います。時間を減らして、数字も出している。自分でも、うまくやっている感覚がありました。
それでも、月曜の朝はやる気が出ない。
この2つが同時に成立するというのが、当時いちばん自分でも説明できないところでした。まわりに言っても伝わりません。「残業ないのに何が不満なの」で終わります。
私自身、その問いに答えられませんでした。
2013年、転職を考えたときに見ていた数字
もっと前の話をします。
2013年11月、私は一度転職を検討しています。候補先の条件を、妻と2人で計算していました。
「残業30時間込みで考えると、5万円くらいが残業代となるはず」
「5時定時だと、それだけで月間20時間の労働時間の違いがある」
このとき私が比べていたのは、時間とお金だけです。
そして、その転職はしませんでした。条件が悪かったからではありません。別の会社に移っても、たぶん同じことになると、どこかで分かっていたのだと思います。
結果として、そこから7年、私は同じ会社にいます。
「忙しいから辞める」と「合わないから辞める」は別物
18年ぶんを並べて、はっきりしたことがあります。
私が減らしたかったのは、労働時間ではありませんでした。
減らしたかったのは、自分で決められないことの量です。
生産管理は、決めるのが仕事に見えて、決められた枠の中で調整するのが仕事でした。納期も、仕様も、価格も、たいていは先に決まっている。そのあいだを、なんとかつなぐ。
得意ではありました。18年やって、役職もつきました。ただ、得意なことと、続けたいことは、同じではない。
💡 パズルに例えると分かりやすい。枠が決まっているパズルを速く解ける人と、枠から作りたい人は、違う人です。私は前者として評価されていて、やりたかったのは後者でした。残業を減らしても、この差は埋まりません。
自分がどちらなのか、確かめる4つの問い
ここからは、使える形にしておきます。辞めるべきかどうかの答えは書けません。自分がどちらのタイプか、切り分けるための問いだけ置きます。
| 問い | 「忙しさ」が原因の人 | 「中身」が原因の人 |
|---|---|---|
| 残業がゼロになったら、続けたいか | 続けたい | それでも辞めたい |
| 金曜の夜、何を思うか | やっと休める | 月曜のことを考えてしまう |
| 同じ仕事を、半分の量でやるとしたら | かなり楽になる | 量の問題ではない気がする |
| 理想の会社を1つ挙げるなら | 残業が少ない会社 | 決められる範囲が広い会社 |
右側が多かったなら、転職先を「残業時間」で選ぶと、たぶんまた同じところに戻ります。
私は2013年に、左側の基準で会社を探していました。そのときは、自分が右側だと気づいていなかった。気づくのに、そこから7年かかっています。
ただ、7年かかったことを、私は無駄だとは思っていない。
左側の基準で探して、条件のいい会社に移っていたら、たぶん3年で同じ場所に戻っていました。残業が少ない会社で、また月曜のやる気が出ない自分。そして今度は「会社のせいではないのか」と混乱していたはずです。
時間をかけて確かめたから、次の判断が変わりました。
辞めると決めたときに私が見ていたのは、残業時間ではありません。自分で決められる範囲が、どれだけ広がるかでした。
※この記事は、私自身のやりとりの記録です。会社名、部署名、関係者の名前は書いていません。残業時間は当時の私の勤怠についての記録で、会社全体の水準を示すものではありません。働き方の良し悪しを評価する記事ではありません。
辞めるまでに実際にやったことは18年勤めた会社を辞めるまでの順番にまとめています。

