結論から言うと、会社を辞めるときにいちばん効くのは、やることの順番です。
同じことをやっても、順番が違うと揺らぐ。私は5年前に一度、順番を間違えて撤回しました。2回目は順番を変えて、引き止められませんでした。
この記事に書くのは、18年勤めた会社を辞めた私が、実際にどの順番で何をやったか。制度の解説ではなく、順番の話です。
※期限のあるものだけ、公的な資料に当たって出典を付けます。それ以外は私の記録です。
順番を間違えると、何が起きるのか
先に言うと、会社に伝えるのを早くしすぎると、揺らぎます。
5年前の私がそうでした。何も決まっていない状態で、先に会社へ言った。だから聞かれて答えられず、撤回しました。その話は昇進が決まった年に会社を辞めた記事に書いています。
飛行機のチケットに似ています。行き先を決める前に予約しても、日程が変わればキャンセルするだけ。先に決めるのは行き先で、予約はそのあとです。会社に伝えるのは、予約のほうにあたります。
私は、どの順番でやったのか
実際の順番です。
| 時期 | やったこと |
|---|---|
| 覚悟が決まる(6月) | 妻に伝えた。「3月で会社を辞める」 |
| 6月中旬 | 一緒に仕事をしていた後輩に、先に話した |
| 10月30日 | 会社を設立(合同会社) |
| 11月7日 | 課長試験を受けた(会社が受けさせるもので、断れなかった) |
| 11月 | 上司に「辞めます」と伝えた |
| 12月 | 課長試験に合格。並行して、拠点と事業の準備 |
| 1月 | 会社の人へ順次、退職を報告 |
| 3〜4月 | 退職の書類をそろえる |
| 4月 | 退職 |
| 4〜5月 | 健康保険・年金・企業年金の手続き |
会社に伝えたのは、覚悟が決まってから半年近くたってからです。
言う前に、何が決まっていればいいのか
順番の核心は、ここです。会社に伝えると、質問が来ます。
私が2回とも聞かれたのは、この3つでした。
- 何をやるのか
- それは、できるのか
- お金は大丈夫か
1回目は、3つとも答えられませんでした。2回目は、3つとも答えられました。質問は同じで、答えの有無だけが違った。
だから、伝える前に用意しておくのはこの3つです。上手な言い方ではありません。
- 何をやるのか … 「自由に働きたい」ではなく、具体的な仕事の中身
- できるのか … 自分がやってきたことと重なっているか
- お金は … 生活費のシミュレーションと、当面の資金
私の場合、覚悟が決まった6月から伝えるまでの半年で、やったのは4つでした。拠点が変わってもリモートで何ができるか。事業の計画。資金の計画。もう一つの拠点をどこに置くか。
事業計画は、たいして書いていません。金融機関に見せるためのものなので、形式を整えた程度。借入もしませんでした。
引き止めというのは、説得ではなく質問の形で来ます。返し方を覚えても意味がない。自分で答えを持っていなければ、その場では作れないからです。
なぜ、会社より先に家族と後輩に言ったのか
家族が最初だったのは、当たり前の話です。辞めると生活が変わるのは、自分だけではないからです。
問題は後輩のほうでした。会社に正式に伝えるより前に、一緒に仕事をしていた後輩へ話しています。
これは、よかったとは書けません。会社に伝える前に現場へ話すことには、当然、別の見方がある。私はそうしました、という事実だけを書いておきます。
ただ、意図はありました。先に人へ言うと、戻れなくなるからです。
自分の中だけで決めていると、都合よく先延ばしできる。誰かに言った瞬間に、それができなくなる。順番の話でいうと、これは「戻れなくする」ための一手でした。
会社を作るのは、辞める前か、あとか
私は辞める前に作りました。退職の5か月前です。
理由は、辞めてからだと動けない期間ができるからです。法人の口座、契約、請求。どれも登記が終わっていないと始まりません。
ただし、思ったようには進みませんでした。
12月に銀行の口座を開こうとしたら、開設は厳しいと言われました。理由は3つ挙げられました。
- 国内にいる時間が読めなかった
- 登記上の住所が、借りている住所だった
- 取引実績がない
同じ月に別の銀行で開設できましたが、「作ればすぐ使える」ではなかった。それが実感です。
💡 法人を先に作ると、決算と納税が先に来ます。私の場合、設立が10月30日で、会計期間を11月1日からにしてしまった。設立日をまたいだので、売上ゼロのまま1期目の決算を出すことになりました。12月中に決算報告と、法人の市民税・県民税の納付をしています。辞める前に作るなら、会計期間の決め方は先に確認してください。
辞める前にやっておくと、あとが軽いこと
ここは、やっておいてよかったものです。
- 書類をまとめて頼む(退職証明書、退職時の源泉徴収票、離職票、健康保険資格喪失証明書)
- 健康保険の見込み額を、両方とっておく(任意継続と国民健康保険。どちらも退職前に聞ける)
- 企業年金・確定拠出年金の扱いを確認する
- 生活費のシミュレーション
私は書類を頼むタイミングがばらばらになって、そのぶん確認のやりとりが増えました。一度に頼めるものは、まとめて頼んだほうが早いです。
退職金は、確定給付企業年金からの支払いでした。退職金と確定拠出年金は別のもので、私はここを混同していた。受け取り方(一時金か年金か)も選べます。
※金額や受け取り方の有利不利は、勤め先の制度と、その人の状況で変わります。私の例をそのまま当てはめないでください。
辞めたあと、期限があるもの
順番の話の最後は、期限です。ここだけは、こちらの都合で動かせません。
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 健康保険の任意継続 | 退職日の翌日から20日以内 |
| 国民健康保険への加入 | 14日以内 |
出典:協会けんぽ「任意継続」/厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」
私は任意継続を選び、家族をその扶養に入れました。中身は退職後の健康保険の記事に。
年金のほうは、初回の納付書が来るまで動けない手続きがありました。企業型の確定拠出年金を個人型へ移すのは、国民年金の初回納付のあとになる、という案内。移換には期限もあります。
「辞めたらすぐ全部できる」ではありません。順番が決まっているものがあります。
私がつまずいたところ
最後に、うまくいかなかったほうを書いておきます。
- 法人の会計期間の決め方(売上ゼロで1期目の決算になった)
- 法人口座の開設(1行目で厳しいと言われた)
- 書類を頼むタイミングがばらばらになった
- 退職金と確定拠出年金を混同していた
- 年金と確定拠出年金の移換に、順番があることを知らなかった
どれも、知っていれば数日で済んだもの。逆にいうと、順番を知らないだけで、そのぶん時間がかかります。
いちばん響いたのは、法人の会計期間でした。設立が10月30日なのに、会計期間を11月1日からにした。たった2日のずれで、最初の期が2日間だけになります。売上が立つ前に決算を出すことになり、税務署と自治体への手続きが、いきなり発生しました。
登記は司法書士に頼めば数日で終わります。けれど「いつからいつまでを1期にするか」は、自分で決める項目。そこを流したのが原因でした。
口座のほうも同じです。「法人を作れば法人口座が持てる」と思っていましたが、銀行は取引実績を見ます。設立直後は、実績がありません。国内にいる時間が読めなかったことと、登記上の住所が借りている住所だったこと。それも重なった。
どちらも、事前に一度でも人に聞いていれば分かったことです。私は登記そのものに気を取られて、その先を見ていませんでした。
私が5年前に撤回したのは、準備が足りなかったからではありませんでした。順番が逆だったからです。決める前に言ってしまった。2回目は、決めてから言いました。
※この記事の日付と内容は、私自身の記録で確認したものです。制度の期限以外は、私の一例です。勤め先の制度や住んでいる市区町村によって変わります。
同じ時期に何を考えていたかは昇進が決まった年に会社を辞めた記事、辞める年の税金の調整はふるさと納税の記事にあります。

