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結論から言うと、退職代行を見るとき、私が最初に確認するのは料金ではありません。運営元が誰か。そこです。
先に立場を書きます。私は退職代行を使っていません。2020年に自分で辞意を伝えて17日で撤回し、5年後にもう一度自分で伝えて辞めた。だから使い勝手について書けることはありません。
この記事に書くのは、「代わりに言ってもらう」という選択肢が、法律上どういう形になっているか。私は弁護士ではないので、条文と公的機関の資料をそのまま並べます。
私は自分で言って、1時間半説得されました
2020年10月2日、上司に辞めると伝えています。その日の15時42分に、妻へ2通送っていました。
「課長は、朝話して絶句」
「部長は、よくわからんが、1時間半説得された!笑」
朝に課長、そのあと部長。1時間半です。
「よくわからんが」と書いているのが、当時の実感だと思います。何を説得されたかを、その日のうちに要約できていない。1時間半話して、残ったのが「よくわからんが」でした。
そして10月19日の朝5時3分、家を出るときにこう送っています。
「ださいおれ 行ってくる」
その2時間後。
「もうちょっと続けます! っていうといた!!!」
17日で撤回しました。詳しくは17日で撤回した記事に書いています。
💡 歯医者の予約に似ています。痛いのは治療そのものより、行くと決めて電話をかけるところ。私にとっての1時間半は、その電話でした。
言えない人がいる、という当たり前のこと
私は言えました。折れましたが、言うことはできた。
ただ、あの1時間半を思い出すと、言えない人がいるのは当たり前だと思います。上司が怖い、体調が持たない、話し合いの場そのものが成立しない。そういう状況で「自分で言え」というのは、こちらの都合でしかありません。
退職代行は、そこを外注する仕組みです。辞めるという判断ではなく、伝えるという作業を人に渡す。判断は本人がやります。
気になるのは、たぶん料金より「これ、大丈夫なのか」
私がもし使う側だったら、いちばん引っかかるのはここです。他人が会社に電話して、本当に辞められるのか。
なので、条文から確認しました。
まず、辞めること自体について。民法第627条第1項にこうあります。
「当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。」
大阪労働局のよくある質問にも、「会社の同意がなければ退職できないというものではありません」と書かれています。
ただし同じページに、就業規則に定めがある場合は原則としてその規定が適用される、とも書かれています。「2週間で辞められる」と単純に言い切れる話ではありません。
💡 電車の切符に似ています。買えば乗る権利はあるが、乗り方には駅ごとのルールがある。権利があることと、手続きが要らないことは別です。
運営元によって、条文上できることが変わります
ここが、この記事でいちばん書きたいところです。
退職代行は、大きく3つの運営元に分かれる。そして、法律上できることの範囲が違います。
理由は弁護士法第72条です。e-Gov法令検索で条文を確認しました。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。」
法務省が令和5年8月に公表した資料では、この条文の要件が3つに整理されています。「報酬を得る目的」「法律事件」「法律事務」。法律事件については、法律上の権利義務に争いや疑義があり、かつ「事件性」が必要と説明されています。
つまり、単に意思を伝えるだけなのか、条件を話し合うのかで、話が変わってくるという構造になっています。
| 運営元 | 一般に説明されている範囲 |
|---|---|
| 民間企業 | 退職の意思を伝える、書類のやりとりを取り次ぐ |
| 労働組合 | 上記に加えて、労働条件についての団体交渉 |
| 弁護士・弁護士法人 | 法律事務の取扱い(交渉、請求、訴訟の代理) |
労働組合が交渉できる根拠は、労働組合法。東京都労働委員会の用語説明には、団体交渉について「使用者は、正当な理由なしにこの申入れを拒否することはできません」とあり、正当な理由のない拒否は不当労働行為として同法第7条で禁止されている、と書かれています。
どこからが弁護士法第72条に触れるのかの判断は、弁護士の領域です。私はその判断をする立場にない。ここに書いたのは、条文と公的機関の説明に何と書いてあるか、それだけです。
差が出るのは、揉めたときです
伝えるだけで終わるなら、正直、どの運営元でも大きな違いは出にくいと思います。
差が出るのは、そこから先に何かが起きたときです。
- 有給を使いたいと言ったら断られた
- 最後の給与や残業代が支払われない
- 会社から損害賠償をほのめかされた
- 離職票や源泉徴収票が送られてこない
私自身は、辞めるときにこれらで揉めていません。ただ、揉める人がいるのは想像がつきます。1時間半の説得がある会社なら、そのあとも何か言ってくる可能性はある。
伝えるところだけを見て選ぶと、その先で足りなくなることがあります。
💡 旅行の保険に似ています。何も起きなければ、いちばん安いもので足りる。差が出るのは、何か起きた日だけです。
私が選ぶなら、この5つを見ます
使っていない人間が書くので、使い勝手の話は入っていない。条件として確認できることだけを並べます。
| 見ること | 理由 |
|---|---|
| 運営元が誰か | 民間・労働組合・弁護士で、条文上できる範囲が変わる |
| 揉めたときにどこまで対応するか | 有給、未払い賃金、書類の取り寄せ、損害賠償の話 |
| 料金に何が含まれるか | 追加費用が出る条件を、申し込む前に聞く |
| 連絡手段と、返事の速さ | 夜中に決心する人が多い。窓口が開いている時間を見る |
| 自分の雇用形態に対応しているか | 正社員、契約、業務委託、公務員で扱いが変わることがある |
いちばん上を先に見る、というのがこの記事の主旨です。
料金表を並べて比べたくなる。ただ、料金が同じでも、できることが同じとは限りません。ここは順番の問題です。
弁護士法人が運営している例としては、弁護士法人ガイア総合法律事務所があります。代表者は安沢尚志弁護士、所在地は東京都港区新橋。相談の窓口はLINEとメール。有給消化や離職票・源泉徴収票の取り寄せ、残業代や退職金の請求にも対応すると書かれています。
料金は公開されていません。他のサイトに金額が載っていることがあるものの、私はそれを確認できていない。だからここには書きません。相談は無料と書かれているので、金額はご自身で聞いてください。
この記事が向かない人
はっきり書いておきます。
- すでに会社と係争になっている
- ハラスメントの被害を訴えたい
- 退職そのものではなく、労働条件を争いたい
これらは、退職代行という枠を超えた話です。最初から弁護士に相談する領域だと思います。
そして、私が通っていない道でもあります。通っていない道について、私は書けません。
最後に、もう一度だけ
私は退職代行を使っていません。自分で言って、一度折れて、5年後にもう一度自分で言いました。
だから「使ってよかった」とも「使わないほうがいい」とも書けません。書けるのは、あのとき1時間半の説得を受けた人間として、それを回避する仕組みがあることは知っておいてよかった、ということだけです。
辞めるまでにやったことの順番は18年勤めた会社を辞めるまでの記事に、辞意を撤回したときの記録は17日で撤回した記事にまとめています。
※この記事は、私自身の記録と、公開されている条文・公的機関の資料をもとにしています。私は弁護士ではなく、法的な助言をする立場にありません。個別の判断は、弁護士または労働局にご相談ください。会社名・上司の名前は書いていません。
※出典:民法第627条/弁護士法第72条(e-Gov法令検索、2026年8月31日確認)。大阪労働局「よくあるご質問(退職・解雇・雇止め)」。東京都労働委員会「用語集」。法務省大臣官房司法法制部「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(令和5年8月)。弁護士法人ガイア総合法律事務所の記載は、同事務所サイトおよび特定商取引法に基づく表記(2026年8月31日確認)によります。

