結論から言うと、「職務経歴書に書く実績がない」と感じている人の多くは、実績がないのではありません。実績の欄に書けるものだけを探して、職務内容の欄を空けている状態です。
ハローワークが配っている手引きでは、書くべき職務経歴の中身が、次のように分かれています。
| 欄 | 書くこと |
|---|---|
| 職務内容 | 仕事の具体的内容、処理方法、責任の範囲 |
| 実績 | 営業成績などの成果指標の数値 |
出典:ハローワークインターネットサービス「職務経歴書の書き方」(厚生労働省)
数値が出るのは「実績」の欄だけです。「職務内容」の欄には、数値ではなく、処理方法と責任の範囲を書くように書かれている。ここを埋められる人は、実は多い。
この記事では、その埋め方を書きます。
職務経歴書は、何を判断するための紙なのか
同じ手引きに、目的が書いてあります。採用担当者が「応募者が自社の求める職務経験や能力を持っているかどうかを判断」するための資料である、と。
判断するための資料です。自分を褒めるための紙ではありません。
ここを取り違えると、書くことがなくなります。すごい成果を並べなければいけないと思うと、多くの人には並べるものがない。けれど「この人に任せられるか」を判断する材料なら、たいていの職歴から出てきます。
引っ越しの見積もりに似ています。「荷物がたくさんあります」では、値段が出ません。段ボールが何箱で、冷蔵庫と洗濯機があって、階段は3階まで。相手が判断できる単位に分かれて、初めて見積もりが出る。
職務経歴書で「書くことがない」と感じるのは、荷物がないのではなく、まだ箱に分けていない状態です。
履歴書とは、何が違うのか
手引きには、職務経歴書は「履歴書に書ききれなかった内容などについて補足しより詳しく記載」するもの、と書かれています。
つまり、履歴書と同じことを詳しく書き直す紙ではありません。履歴書に入りきらなかった中身を出す場所です。
履歴書に書けるのは、勤務先と在籍期間くらいです。何をしていたかは、行が足りない。職務経歴書は、その足りない行を引き受けます。
だから、履歴書に書いた内容をなぞって字を増やしても、読む側の判断材料は増えません。志望動機についても「履歴書と同じ内容にならないよう、エピソード」を書くように、と手引きは指定しています。
同じことを2回言うための紙ではない、ということです。
「書く実績がない」と感じるのは、どこでつまずいているのか
つまずき方は、だいたい3つに分かれます。
- 数値の出る仕事をしていない(管理部門、生産管理、事務、技術職など)
- 成果が個人ではなくチームに帰属する
- 同じことを長く続けていて、区切りがない
いずれも「実績」の欄で止まっているだけです。手引きが求めている「処理方法」と「責任の範囲」は、まだ手つかずになっている。
処理方法とは、どうやってその仕事を回していたか。責任の範囲とは、どこまでを自分が決めていたか。この2つは、数値が出ない仕事でも書けます。
では、私はどう書いて落ちたのか
ここからは私の話です。
2013年の秋、私は転職活動をしていました。当時は印刷会社で生産管理をしていて、応募したのは営業職。職務経歴書は、エージェントの指摘を受けながら何度も書き直しました。
そして11月、不採用の連絡が届きます。理由まで書かれていました。
「これまで携わって来られたお仕事は、その大部分が社内とのやり取りであり」──だから営業の即戦力になるイメージが持てなかった、という趣旨です。
読んで、納得しました。事実だったから。
やりとりの相手は、工場と、営業と、協力会社。値段を決めて契約を取ってくる仕事ではありません。それを「営業ができます」と言い換えて売ろうとしていたのは、私のほうでした。
いま振り返ると、私が書いていなかったのは責任の範囲です。
印刷の生産管理は、印刷機の予定を組む仕事です。しかしその予定は、勝手には決まりません。納期と、機械の空きと、紙の入荷と、どの案件を先に通すか。そこには判断があって、判断した結果に責任がついてくる。「調整していました」と書いたら、それは伝わらない。誰の要望を、何を基準に、どこまで自分の裁量で決めていたか。そこを書くべきでした。
書けなかったのではなく、書くところだと思っていなかったんです。
このときの転職活動がどう終わったかは、昇進試験と転職の面接を同じ月に受けた話に書きました。
職務内容は、どう分けて書けばよいか
手引きの言葉をそのまま使うと、職務内容は「仕事の具体的内容、処理方法、責任の範囲」です。この3つに分けて書くとよいでしょう。
| 分け方 | 書くこと | 例(生産管理の場合) |
|---|---|---|
| 具体的内容 | 何をしていたか | 印刷案件の進行管理 |
| 処理方法 | どうやって回していたか | 受注から納品までの工程を組み、工場・営業・協力会社と調整 |
| 責任の範囲 | どこまで自分が決めていたか | 月◯件の案件について、工程順と外注先の選定を担当者判断で決定 |
3行目が抜けている職務経歴書が、いちばん多いはずです。そして読む側がいちばん知りたいのも、この行。
💡 「責任の範囲」を思い出すコツは、自分が休んだ日に何が止まったかを考えることです。止まるものがあったなら、そこが自分の範囲。誰かが代わりに決めていたなら、その仕事は範囲の外だったということになります。
数値が出ない仕事は、どう書くか
売上や達成率が出ない仕事でも、数を書ける場所はあります。
- 扱っていた件数・点数・案件規模
- 関わった人数(社内・社外の別)
- 期間(何年、何か月)
- 範囲(拠点数、取扱品目数、担当エリア)
- 改善したこと(前はどうで、あとはどうなったか)
ここで大事なのは、盛らないことです。手引きにも「同一の内容を複数の応募先企業に使い回しすることは適当でありません」とあります。使い回しを避けるということは、応募先ごとに数字を選び直すということでもあります。都合のいい数字を作るのとは、違う。
数値がどうしても出ないなら、比較で書く方法があります。「担当を引き継いだ時点では手作業だった集計を、表計算での処理に置き換えた」。数値がなくても、前後の差は書けます。
使い回しは、なぜ効かないのか
手引きにはっきり書かれています。「応募先企業に応じて記載」すること、そして「同一の内容を複数の応募先企業に使い回しすることは適当でありません」と。
理由は、読む側の質問が企業ごとに違うからです。
同じ生産管理の経験でも、メーカーが読めば「工程を理解している人」に見えます。商社が読めば「納期交渉の相手をしてきた人」に見える。営業職の募集で読めば「社外との折衝経験がどれだけあるか」を探されます。同じ経歴を、違う目的で読まれている。
だから、どの経験を先に置くか、どこを詳しく書くかは、応募先ごとに変わります。全部を書き直す必要はありません。順番と分量を変えるだけでも、読まれ方は変わります。
未経験の職種に応募するときは、どこを書くか
私が落ちたのは、この形でした。生産管理から営業へ、という応募です。
未経験の職種に応募するとき、職務経歴の欄だけで勝負すると苦しくなります。経験そのものが無いから。手引きは、職務経歴のほかに3〜6項目を足すよう示していて、その中に次の欄があります。
- 活かせる能力(技術・技能・知識)
- 特別な経験(プロジェクト経験、イベント経験)
- 自己PR(性格・行動特性、仕事への姿勢)
未経験職種に応募するなら、この3つが本体になります。
ただし、書き方には注意が要ります。「営業ができます」と言い切るのは、未経験の側がやると根拠のない申告になる。私はそれをやって落ちました。
そうではなく、やってきたことの中から、応募先の仕事と重なる部分だけを取り出す。社外の相手と条件を詰めた経験があるなら、それは交渉です。誰かの都合と誰かの都合の間に立った経験があるなら、それは調整です。名前を付け替えるのではなく、中身が同じところを探す。そういう作業になります。
重なりが見つからないなら、それは応募先が違うのかもしれません。それも判断材料のひとつです。
形式は、どれを選べばよいか
手引きには3つの形式が示されています。
| 形式 | 並べ方 | 向いている場合 |
|---|---|---|
| 編年体式 | 古い経歴から順に | 迷ったらこれ。一般的な方法として示されている |
| 逆編年体式 | 新しい経歴から順に | 直近の経験を先に見せたいとき |
| キャリア式 | 職歴を種類ごとにまとめ、アピール力の高い順に | 職種をまたいで経験があるとき(別に時系列の「略歴」を付ける) |
A4縦で1〜2枚、本文は10.5〜12ポイント程度、行間や余白は詰めすぎない、と書かれています。
文体についても指定があります。一文は長くせず、原則として名詞(体言)止め。ただし「自己PR」と「志望動機」の欄だけは「〜を担当しました」といったていねいな文体にする、とあります。
※ここに挙げた形式・書式は、上記のハローワークの手引き(2020年5月版)に基づいています。応募先が独自の様式を指定している場合は、そちらが優先されます。
書き終えたら、何を確かめるか
最後に、手引きが挙げている点検項目を並べておきます。
- 誤字・脱字がないか読み返す
- 印刷したものは、かすれや汚れがないか見る
- 固有名詞(企業名・資格名・学校名)を略さず正式名称で書いたか
- 年号を和暦か西暦のどちらかに統一したか
- 専門用語に、読み手向けの説明を( )で付けたか
- 完成したものをコピーしておき、面接前に読み返す
これに加えて、ひとつだけ足すとしたら、次の1行です。
「この紙を読んだ人は、私に何を聞いてくるだろうか」
面接で聞かれることは、たいてい職務経歴書に書いてあることの先にあります。書いた本人が答えを持っていない項目を残しておくと、そこを聞かれて止まる。私はそれで一度止まりました。
書く作業は、答えを用意する作業でもあります。
会社を辞めるまでに何をどの順番でやったかは、昇進が決まった年に会社を辞めた話に書きました。辞めたあとのお金の話はふるさと納税の記事、20代のころ何を考えて外へ出ようとしていたかは語学留学に460万円かけた話にあります。

