結論から言うと、紹介された物件のキャッシュフローが、自分の計算と合いませんでした。
そのとき私がやったのは、黙って断ることでも、相手の数字を信じることでもありません。自分が組んだ計算式を、そのまま相手に送りました。
2023年3月27日のこと。文面はこう始まっています。
「お話しいただいた内容をベースにシミュレーションを行いました。先日おっしゃっていたCFと乖離幅が大きいため、自分たちの計算方法が間違えていそうではあるのですが、、、、」
この記事に書くのは、そのときに使った項目と、合わなかったときにどうしたか。私は不動産の専門家ではなく、買った側の一人です。
※具体的な物件の価格・家賃・利回りは書きません。特定につながるためです。数字の置き方も、私がその時点で採った前提にすぎません。
何が合わなかったのか
CFは、キャッシュフローのことです。家賃が入って、返済と経費と税金を引いたあとに、手元に残るお金。
紹介してくれた方から聞いていた金額と、自分で組み直した金額が、はっきり違いました。
どちらが正しいかは、その時点では分かりません。分からないまま進むのが、いちばん危ない。そう思って、計算式ごと送りました。
私が置いた項目
送った内容の項目だけ、並べます。
- 購入価格(土地と建物に分けて置く)
- 耐用年数(木造で築年が経っているものは、ここが短くなる)
- 利回り
- 借入条件(借入額・金利・返済方式)
- 家賃収入(満室運営を想定した年額)
- 経費率(BM費、PM費、共用部の電気・水道、固定資産税、火災保険)
- 所得税
- 住民税
そのうえで、税引き後のキャッシュフローを年額と月額で出しました。
💡 ここで大事なのは、項目の数だと思っています。私が最初に見ていたのは「価格」と「利回り」の2つだけでした。実際に必要だったのは8つです。カレーの材料費を計算するのに、肉と野菜の値段だけ見て、米とルーと光熱費を数えていないのと同じでした。数字は足りない項目のぶんだけズレます。
経費率を、20%で置いた
自分で決めた前提のうち、いちばん影響が大きかったのがここです。
経費率20%。BM費(建物管理)、PM費(賃貸管理)、共用部の電気と水道、固定資産税、火災保険。これらをまとめて、家賃収入の20%と置きました。
この数字に、確たる根拠はない。調べて出てきた水準を採っただけです。
けれど、置いたことに意味がありました。置かないと、家賃がまるごと収入に見えます。紹介された数字と自分の数字が違ったのは、たぶんここの扱いが違ったからです。
※経費率は、建物の構造・築年・管理の委託範囲・地域で変わります。20%が正しいという話ではありません。自分の物件で見積もりを取ってください。
「利回り」で選ぼうとしていた自分
少し戻ります。
この物件を見ていた3月、私はほかにも何件か検討していました。並べたときに使っていたのが、利回りです。
利回りは分かりやすい。1つの数字で、並べ替えられる。そこが便利で、そこが危ないところでした。
利回りは、家賃収入 ÷ 価格です。返済も、税金も、経費も入っていません。入っていないものが多いほど、数字はきれいに見えます。
体重だけ見て健康かどうかを決めるのに似ています。1つの数字で並べられるからといって、それで判断していいことにはならない。
3月27日に計算式を組んだのは、利回りで並べるのをやめるためでもありました。
同じ日に、質問も送っている
計算だけでなく、確認したい点も並べて送っています。原文の項目です。
- オーバーローンはどこまでが含まれるのか。登録免許税や仲介手数料も含みかどうか
- 管理会社が対応する修繕は、都度こちらの負担か。管理費に含まれるのか。退去が出たときの客付け費用は
- 大規模修繕の実施の有無
どれも、価格表には書いていないものです。
3つとも「あとで請求が来るか、来ないか」の話でした。買う前に聞けば答えが返ってきて、買ったあとに知ると請求になる。その差だけです。
「自分たちの計算方法が間違えていそう」と書いた
送った文面のここが、いま読んでいちばん良かったところです。
相手の数字を否定していません。「おかしいのでは」ではなく「こちらが間違えていそう」と書いている。
これは謙遜ではなく、そのほうが答えが返ってくるからでした。
否定の形で聞くと、相手は説明ではなく反論をします。「教えてください」の形にすると、計算の中身が返ってくる。知りたいのは勝ち負けではなく、どこがズレているかです。
この物件は、買っていません
結論を書いておきます。このとき見ていた物件は、買いませんでした。
計算が合わなかったからではありません。条件と合わなかったからです。
その少し前、私は1軒目の条件を紙に書いています。「自分たちが最大限に感じるリスク:売りにくい、売れない」。木造で耐用年数が短く、規模の大きいものは、そこに当たりました。
条件を書いた話は収益物件の1軒目の条件を紙に書いた記事にあります。
実際に買ったのは、その1か月後に見つけた別の物件でした。あのとき計算式を作っていたので、次のときは同じ表に数字を入れるだけで済みました。
その物件で契約に進んだとき、私はこう書いています。
「ローン本審査可否 →OKなら購入 →NGなら撤回」
そして、その下にもう一行。
「手付金は戻るのか?」
買うと決めたあとに、戻れる条件を確認しています。調べた結果、ローン特約がついていれば、その期間内に融資が下りなかった場合は手付金が戻る見込みだと分かりました。契約の日に、その期間を確認して進めています。
※ローン特約の有無と期間は契約書の記載によります。必ず契約前に、その契約書で確認してください。
計算と同じで、先に確認したものは条件になり、あとで気づいたものは損失になります。
計算は、断るためにも使える
もうひとつ、あとから効いたことがあります。
自分の表があると、断りやすい。
紹介された物件を見送るとき、「なんとなく気が進まない」しか言えないと、話が終わりません。相手も次を出しにくい。
「この条件だと、うちの前提では手元に残る額がここまでなので」と言えると、1回で済みます。そして次に紹介されるものが、条件に近づきます。
断る理由を数字で持っているかどうかは、相手のためでもありました。
数字が合わなかったときにやること
使える形にしておきます。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 自分で組み直す | 相手の数字を検算できないと、判断が相手任せになる |
| 項目を8つ以上置く | 価格と利回りだけでは足りない。税金と経費を必ず入れる |
| 前提を書き出す | 経費率20%のように、根拠が薄い前提ほど書いておく |
| 「こちらが間違えていそう」の形で聞く | 反論ではなく説明が返ってくる |
| 価格表に載っていない費用を、3つ聞く | オーバーローンの範囲/修繕の負担/大規模修繕の有無 |
いちばん効いたのは、3行目でした。
根拠の薄い前提を隠すと、自分の計算のほうが正しく見えてしまいます。書き出しておけば、相手も「そこが違う」と指摘できる。
そして、合わない数字は、合わないまま持っていっていい。きれいに揃えてから相談する必要はありません。私は「間違えていそう」と書いたまま送って、それで話が進みました。
※この記事の内容は、私自身の当時の記録です。物件の価格・家賃・利回り・所在地・関係者の名前は書いていません。税制と経費の水準は、物件と時期によって変わります。私は勧める立場にありません。
自宅を買ったときの話は住宅ローンと転職の順番の記事にあります。

